意思決定会計
3.価格決定
3.価格決定
1.価格決定の意義
(1)価格決定目的の重要性
価格決定あるいは価格政策は古くから原価計算の重要な目的の一つとされてきた。
今日、原価計算目的はその生成の時期に比してはるかに複雑かつ多面的になっているとはいえ、価格決定目的の重要性が失われたわけでは全くない。すなわち、現代の企業は急速な技術革新・製品需要の急激な変化、過剰生産能力の傾向と、これらにともなう競争の激化のうちに、企業の存続と発展を図っていかねばならない。こうした事情において、企業の競争的活動では製品開発、販売促進及び価格政策の面が重視され、これらの相互的関連での価格決定の重要性がクローズ・アップされてくるのである。
(2)価格決定の意義
価格決定は、いくらの価格をつけたらある利益が上がるかを問題とする狭義の価格決定と、ある価格で利益がどれほどあがるかを考える価格考慮とに分けることができる。ここで扱うのは、狭義の価格決定である。
狭義の価格決定
達成すべき利益目標を出発点として、それを達成し得る価格を決定すること。
(利益)→(原価)→(価格)と表わし得る。
2.価格決定の方法
原価計算の価格決定目的に対する役割は、価格決定に有用な原価情報を提供することにある。かかる原価によって価格を直接に決定する方法、あるいは評価する方法は一般に原価・価格決定法と呼ぱれる。
価格決定の方法には、各種あるが、ここでは全部原価基準による価格決定と部分原価基準による価格決定について取り上げる。
全部原価基準にょる価格決定
目標価格=製品単位当たり総原価十製品単位当たり目標利益
=製品単位当たり総原価×(1十目標マーク・ァップ率)
部分原価基準にょる価格決定
目標価格=製品単位当たり変動費十製品単位当たり目標限界利益
=製品単位当たり変動費十(固定費+投下資本×目標投下資本利益率)/予想販売量
=製品単位当たり変動費×(1+目標マーク・ァップ率)
両方法の比較
全部原価による価格決定
長所
・固定費の回収を含むので、長期的・正常的な価格決定に適する。
・全部原価に加算する利益幅さえ正当なら杜会的承認が得られる。
・市場での需要と価格の関係が未知な段賭での試行錯誤的価格決定に適する。
短所
・固定費の回収により、製品国有の収益性が不明確になる。
・それにともない、限界利益は正なのに、(つまり固定費の回収に貢献するのに)全部原価を回収できないことを根拠に受注・生産をしない恐れがある。
・また、受注価格が全部原価を上回っても、操業度が低ければ固定費は回収で
きない。このことを忘れ、操業度拡大の努力を怠る恐れもある。
部分原価による価格決定
長所
・固定費の配賦を回避するので、製品固有の収益性が明確になる。
・それにともない、製品固有の収益性に応じて固定費を回収するように、弾力的な価格決定が行える。
・CVP分析が行える。
短所
・弾力的な価格決定が可能なだけに、競争を激化させる恐れがある。(安売り競争→共倒れ)
・長期的には固定費をも回収する必妻があるのに、そのことを忘れてしまう恐れがある。
<参考>価格最低限
ある製品の生産販売を続行するよりも、中止したほうが、有利となるような限界的な価格