意思決定会計
2.原価の固変分解
2.原価の固変分解
直接原価計算を実施するには、原価の固変分解が行われなければならない。そして、これまでの議論においては、原価を変動費と固定費とに正確に分解できることが前提となってきた。
しかし、現実の企業では、この「原価の正確な固変分解」は容易にはいかない。
そこで、以下に述べるような各種の方法を、必要に応じて併用して実施している。
1)勘定科目実査法(勘定科目精査法)
過去の経験に基づき、決算自的の勘定科目表から現在使用している費用項目を個々に精査して、費目ごとに変動費か固定費かに帰属させる。手続的には簡単であるが、主観的な分解であり、恣意介入の余地がある。
そこで、この方法は、「純粋な固定費または変動費であることが明らかな費目を選び出す」にとどめ、残された費目について他の方法によることが望ましい。
2)工学的方法(IE法)
投入量と産出量との技術的な関係に基づき、発生すべき原価を予測する方法である。新製品の製造原価などは過去の経験が利用できないために、会計的方法や統計的方法が役に立たない。このような場合に、当該方法が有効である。
但し、投入量と産出量との困果関係が間接的で把握し難いときには、その効果が薄れる。また、種々の分解方法の中でも最もコストが高くなる。
3)統計的方法
過去原価の統計的分析による方法で、各種の方法があるが、そのいずれかにおいても、原価と営業量との関係が次のような単純な方程式で表現できることが前提となる。
y=a+bx
x=営業量a=固定費b=変動費率y=原価の総額
a)高低点法
2つの異なった営業量(一般に高点と低点)における原価の比較から、その原価態様を推定する。つまり、最高操業度の点と最低操業度の点を結ぶ直線をもって、原価を固定費と変動費とに分解する方法である。
b)スキャッターチャート法
過去の原価データをグラフ上に記入し、各点の中央に目分量で直線を引き、これから変動費率と固定費額を推定する。この方法は簡単であり、高低点法に比べると、すべての業績データの点を利用して原価直線を決定する点はよいが、いかんせん目分量であり、客観性に欠ける。
c)最小自乗法
b)のために用意したグラフ上の各点を、客観的に一本の線で表わすために、誤差の自乗和を最小にするようにパラメータ値を決める推定方法である。
覚えるべきは、以下の公式である。
公式の覚え方。
・y=a+b x(これが求める原価直線だったはず)を用意する。
・この各項にΣをつける。
(nは業績データの数)
・この各項にΣxをつける。
Σy=na+bΣx
Σxy=aΣx+bΣx2
→連立して解く。
<研究>
直接原価計算はなぜ制度として部分的にしか導入されないのか。
原価計算基準30
総合原価計算における直接原価計算
…「総合原価計算において、必要ある場合には、一期間における製造費用のうち、変動直接質及び変動間接費のみを部門に集計して部門費を計算し、これに期首仕掛品を加えて完成品と期末仕掛品とに按分して製品の直接原価を計算し、固定費を製品に集計しないことができる。
この場合、会計年度末においては、当該会計期間に発生した固定費額は、これを期末の仕掛品及び当年度の売上品とに配賦する。」
このように、直接原価計算を認めながらも、最終的には、固定費調整を必要としており、全面的には認められていない。
<理由>
①原価の固変分解の客観性の確保が困難なため。
②全部原価の原則(基準六)に反するため。