意思決定会計
1-4.事業部長の業績評価
1-4.事業部長の業績評価
直接原価計算が、企業におけるセグメント別の収益性の測定手段として、極めて有用であることは前述の通りである。そこで、次に直接原価計算に関する知識を前提として、企業における重要なセグメントのひとつとしての事業部の業績、特に事業部長の業績評価について検討を加えていくことにする。
1)事業部長の業績評価基準
A.管理可能利益
事業部長の業績評価基準としてまず考えられるのは、事業部の菅理可能利益である。
この利益は、
管理可能利益=事業部売上高‐変動費‐管理可能個別固定費
と計算される。
しかし、事業部長の業績を利益額の大小だけで測定するのはよくない。なぜならば、資本を多く使用すれば、利益額は多くなるのは当然である。したがって業績評価基準には、事業部使用資本を考慮しなければならない。
B.管理可能投下資本利益率
次に考えられる業績評価基準は、収益性の指標として一般的に使用される投下資本利益率(ROI)であり、ROlを業績評価基準とするには、次の式によって計算する。
管理可能利益
管理可能投下資本利益率=――――――――×100
管理可能投資額
この業績評価基準の特徴は、資本と利益の関係、すなわち収益性を比率(%)で示す点にあり、これは長所ともなり短所ともなる。
まず長所としては、
(1)この評価基準ば、極めて有益な公分母である、という点にある。つまり、収益性をパーセントで示すから、企業内部における他の事業部や、外部の他企業とも、規模に関係なく比較できる。
(2)次にROIは、
利益=利益 × 売上高=(売上高利益率)×(資本回転率)
資本 売上高 資本
に分解できるので、事業部業績のよかった(あるいは悪かった)理由を、販売のマージンと資本の利用度に分解することができ、さらにそれらの構成要素を分析して有用な情報を入手することができる。
ROIの短所は、
(1)事業部長の関心を、利益額の増大よりも比率の増大に向けさせること、
(2)その結果、事業部の利害と全社的な利害が対立し、、目的適合性が失われること、
である。
C.管理可能残余利益(RI)
残余利益(RI)ば、次の式によって計算する。
管理可能残余利益=管理可能利益‐管理可能投資額×資本コスト率
RIを業績評価基準に使用することは、「資本コストを上回る利益の金額を増大せよ」
ということに等しい。
このように残余利益の長所は、
(1)事業部の利益を、使用資本との関連で測定する尺度であること、
(2)事業都の関心を、利益率の増大よりも金額の増大へ向けさせること、
(3)その結果、目的整合性が保たれること、である。
他方、残余利益の短所は、事業部長の業績は、資本と利益に関する収益性という単一の尺度だけで測定できるか、という点にある。