意思決定会計
1-1.限界利益(貢献利益)の重要性
1-1.限界利益(貢献利益)の重要性
短期利益計画に役立つ適切な会計惜報は、原価・営業量(売上高)・利益の三者の相互関係についての情報である。そしてその中でも利益は、原価と営業量の関係から結果として求められるので、原価と営業量の関係こそ、短期利益計画にとって核心的な情報である。
◆短期利益計画◆ 短期利益計画とは、「企業内外の諸条件を所与とした上で、次年度の目標利益をいくらにするか、またはこれをどうやって実現するか」を計画したものをいう。 この計画に必要な会計情報を提供することが原価計算に求められている。 短期利益計画にとって、適切な会計情報は、「製品をどれほど販売したらいくら原価ががかり、したがっていくら利益が得られるか」についての情報や、「利益をこれだけ獲得したい、そのためにはいくら販売したらよいのか」、つまり「原価・営業量・利益の関係」についての情報である。
そこで、短期利益計画にとっては、原価は営業量の変化に応じてどのように反応するかという観点、つまり原価態様(コスト・ビヘイビァー)の観点から変動費と固定費とに分類される。 しかし、原価を発生源泉(=原価は、どこから何のために発生するか)という観点から、変動査、固定費を見直してみる。
◆キャパシティ・コストの概念◆ 変動費は、業務活動(生産活動と販売活動)を行えぱ発生し、行わなけれぱ発生しない原価であるといえる。変動費の典型的な例は、原材料費である。原材料費は、製品を生産すれば発生し、生産しなければ発生しない。 したがって、変動費は、アクテイビテイ・コスト(Activity Cost:活動原価)であるといえよう。 これに対して固定費は、業務活動を行おうと、行うまいと、一定の生産・販売力を維持しようとする限り、業務活動とは無関係に発生する原価である。 固定費の典型的な例は、定額法によった場合の機械設備の減価償却費である。 この原価は、生産を全然しなくても、設備を保有している限り毎月同額ずつ発生する。 したがって、固定費は、キャパシティ・コスト(Capacity Cost:能力原価)であるといえよう。
さて、経営者の立場からすると、変動費と固定費のうち、どちらの原価から先に回収したいと思うであろうか。
変動費は、業務活動原価(略して「活動原価」ともいう)であり、通常、それは短期現金支出原価である。つまり、変動費は、直接材料費や直接労務費の実際の支払いについて考えれば分かるように、即座か、あるいは近い将来に現金で支払わなければならない原価からなっている。したがって、反復して生産・販売活動を続けようとする限り、売上高からまず変動費を回収しなければならない。つまり、直接材料費を回収しないと、再生産のための材料を購入できないし、仕入代金の返済にも窮することになりかねないからである。
これに対して固定費は、キャパシティ・コストであり、その大部分は長期非現金支出原価からなっている。耐用年数10年の機械設備の減価償却費を例にとれば、その取得原価から残存価額を差し引いて計算した要償却額を、10年間かかって回収すればよいわけであって、ある月の減価償却費を回収できなかったからといって、その会社が直ちにつぶれてしまうわけではない。かくして企業経営者にとっては、変動費は先に回収すべき原価であり、固定費は後回しにしてもよい原価である。
そこで、売上高から先に回収すべき変動費を差し引き、その残り、すなわち限界利益(貢献利益)によって、固定費を回収して利益をあげる、とするのが経営者の考え方であろう。
かくして、限界利益(貢献利益)こそが、短期利益計画において中心的役割を果たす利益概念である。 そして、この考え方を損益計算書にしたものを「直接原価計算方式の損益計算書」という。
全社レベルの損益計算書
1.売上高 XXX
2.変動売上原価 XXX
変動製造マージン XXX
3.変動販売費 XXX
限界利益(貢献利益) XXX
4.画定費
1)固定製造間接費 XXX
2)固定販売費及び一般管理費 XXX
営業利益 XXX
★なお、ここでの限界利益と貢献利益の概念はほぼ同義である。
「限界利益」Marginal Profit(MP) 売上が一つ増えた時に変化する利益額